お気に入りの照明が見つかったとしても、形だけで判断しないように気をつけてください。空間でどう光るのか、またその光が自分のイメージした光なのかを確かめてください。
今回はペンダントライトを選ぶうえで知っておきたい器具の特長や配置するうえでの考え方、とりつけるときの効果的な手法など実用的な事柄をまとめています。
①器具の特徴を知り、場所に合った器具を選ぶ
- ・空間でどのような光り方をするのかが大事。
- ・ペンダントは大きく分けて、光り方の違うものが2種類ある。全体を照らすもの、部分的に照らすもの。
- ・ランプシェードの素材、形、色味によって光の明るさや広がりは変わる。
- ・形だけで器具を選ばない。
〈部屋全体を明るくしたい場合には、光を透過する素材(布やガラス)のものを選ぶ〉
ランプシェードに布やガラスのような透過する素材を選ぶと、天井や壁にも光が広がり、明るく感じます。しかし、大きさや形、素材によって同じ消費電力でも光り方が違うので、どれくらいの明るさが自分に合っているのかを確認する必要があります。
たとえば、布でできたランプシェード[写真1]は、100Wの明るさでテーブルと天井、壁をやわらかく照らします。この器具はシェード上部が開放されていることにより、天井面を効果的に明るくすることができます。天井や壁を明るくすることは、空間全体を視覚的に明るく見せる効果を得ることができます。これは間接照明の手法と同じです。
同じ100Wでも光り方や使い方によって、明るく感じる人、暗く感じる人それぞれなので、ご自身の灯りの好みを見つけてください。また、裸電球や透明なランプシェードのものを選んだ場合、W数によってはとてもまぶしく感じるので、使う場所には気をつけてください。
1.光が透過する布製シェード
〈抑揚のある落ち着いた空間にしたい場合には、光が透過しない素材(アルミや真鍮など)のものを選ぶ〉
ランプシェードが透過しない素材(アルミ、真鍮、ホウロウなど)を使って、明かりの向きや広がり方をコントロールする必要があります[写真2]。
光り方は器具の形状によって異なりますので、どれくらいの範囲をどの程度明るくできるのかを確認してください。透過しないシェードを使う場合、くまなく明るくするのではなく、必要な場所が必要な明るさになるかを考えてください。つい形から入ってしまい、光り方を無視してしまうと、思っている空間にはなりません。
また、抑揚のある空間づくりの場合、引き算の照明を心がけてください。明かりの扱いが少し繊細になります。たとえば、とりつける場所を事前に決める(家具のレイアウトを決める)、ペンダントライトの釣り高さを調整する、などです。できれば調光できるような設備をあらかじめ計画しておくと、よりいっそう空間に深みが出ます。
2.光が透過しないシェード
②LDKをひとつの空間で考えたときの照明配置
- ・LDKをひとつの空間として考える。
- ・LDKでどのように過ごすか、できるだけリアルにイメージする。
- ・極端に明るいところをつくらない(明るさのトーンを整える)。
- ・必要なところに必要な明るさを意識する。
- ・ひとつの照明で空間全体をまかなおうとしない。
- ・空間にダウンライトを均等に配置しない。
- ・電球の色みを電球色(2700K)に合わせる。
ここでは、抑揚のある落ち着いた空間にする場合に必要なポイントをご紹介します。計画段階の平面図から照明を考える場合、暗くなることが不安で、つい多めに照明器具をプロットしてしまいます。また、LDKではいくつもの照明を使うので、光が互いに影響し合い、必要以上に明るくなってしまいます。そのためにはまず、LDKをひとつの空間として考えて、それぞれの場所で何をするのかを考えて、必要なところに必要な明るさを配置することを心がけてください[写真3]。また、LDKで使用する照明器具のランプの色みは、電球色に合わせてください。よくない例として、キッチンは昼白色(青白い)ランプで、ダイニングは電球色、リビングが昼白色と、とてもアンバランスな合わせ方をしている人もいます[写真4]。
それぞれの照明がどれくらいの明るさで、どのように光るかを知らなければなりません。選んだダウンライトがどれくらいの明るさで、どのくらいの光の広がりがあり、何台くらい必要かを設計者とよく相談してください。設計者の中にはクレームになることを避けるために、あらかじめ多めにプランする人がいます。実際に100Wがどれくらいの明るさになるのかを体感してみてください。そうすることで、今まであいまいだった灯りの基準ができると思います。
3.リビングにはやわらかく全体を照らす布製のペンダントライト、キッチン&ダイニングには低めに吊り下げられたホウロウ製のペンダントライトがそれぞれテーブル面をほのかに照らしている。
4.リビングには昼白色のシーリングライト、ダイニングには電球色のペンダントライトのため、アンバランスな印象になる。
たとえば、キッチンは作業する台が明るくなればいいので手元灯にして、天井のダウンライトをやめる[写真5]。また、キッチンの通路によくダウンライトがついていますが、あまり効果的ではありません。逆に作業するときに天井からの光は頭がじゃまで影になってしまうので、手元灯のほうが雰囲気も実用面でもすぐれています。そうやってひとつずつ整理していくと、落ち着いて居心地のよい空間に変わります。
5.アイランドには低めに吊られたホウロウ製のペンダントライト、奥の作業台はフード照明&棚下ミニダウンライトの組み合わせ。
明るいか、暗いかではなく、長い時間いる家でどう過ごすのかを意識することが大切です。もし暗くなることが心配なら、調光できるようにすることで、いろいろな状況に対応でき、好みの明るさに調整することができます。それでも暗く感じるなら、必要な場所にスタンドライトを使うのもひとつの方法です。flameではご自宅で実際に灯りをお試しいただける「照明レンタル」というサービスを行っています。ご自宅で明るさや光り方、LED電球と白熱灯の比較などを体感していただけます。心地よい明かり探しに役立ててみてください。
また、灯りとは違う要素ですが、明るい空間が好みなのに、インテリアの色調が暗めのものを選んでいるかたがいらっしゃいます。フローリングや家具、カーテンが暗めだと、照明をいくら明るくしても部屋の印象は暗くなってしまいます。
5.アイランドには低めに吊られたホウロウ製のペンダントライト、奥の作業台はフード照明&棚下ミニダウンライトの組み合わせ。
③必要なところに器具を配置するための考え方
〈新築&リノベーションの場合〉
- ・ダイニングテーブルはサイズや位置をシビアに決める。
- ・リビング照明は頭が当たらない高さにとりつけるので、部屋の真ん中くらいでも大丈夫。
- ・キッチンの通路照明はいらない、そのかわり手元を明るくできる照明を選ぶ。
- ・スタンド照明用にコンセントをつけておく。
- ・寝室のクローゼットは開閉時に点灯するタイプの照明をつける。
- ・子ども部屋の勉強机にはスタンドライトを。
〈既存住居・賃貸の場合〉
- ・既存の電源位置をそのまま使い、ペンダントの位置を変更できる配線ダクトレールやペンダントサポーターを使う[写真8]。
- ・天井に穴をあけても修繕費はそんなにかからない(事前に不動産業者に要確認)。
- ・寝室のクローゼットは開閉時に点灯するタイプの照明を使う(イケア推奨)。
- ・どこにでも取り付け可能なクリップ式コンセント照明で、ほしいところに明るさを。
より具体的なレイアウトを考えてください。テーブルの大きさやソファの位置、テレビは本当にそこでいいのか。寝室のクローゼットのために主照明が明るすぎないか。想像ではなく、できるだけリアルにシミュレーションしてみてください。この作業に手を抜いてしまうと、使いにくいままずっと暮らさなければならなくなります。
〈新築&リノベーションの場合の配置〉
新築やリノベーションする場合の照明位置を決めるタイミングは、まず見積もりに影響する品番・台数や位置がプランの段階で必要になりますが、ある程度であれば現場が進んでいても台数や位置を変更することができる場合もあります(設計者と要相談)。変更するタイミングとしては、天井や壁を張る前にやらなければなりません。
なかでもダイニング照明の位置を決めることはとても重要です[写真6]。多くのかたにとって、ダイニングテーブルが生活の中心になるからです。ごはんはもちろん、仕事や勉強、家族団らんなど、いつもダイニングテーブルには人がいます。暮らしの中で一番大事な場所は、照明も素敵に演出してほしいと思います。イメージの中で空間を歩いたり、座ったり、さわったりしながら、テーブルの位置や大きさを検討してください。現場進行の途中で、テープや段ボールなどを使ってリアルなスケール感を体感してもよいかもしれません。ペンダントライトは低く吊るすと、ダイニングがあたたかく素敵な雰囲気になります。リビング照明は多目的に使う場合が多いので、頭が当たらず、じゃまにならないほうがいいと思います[写真7]。
6.目線ほどに低く吊り下げられたペンダントライトがテーブル面を照らし、テーブルに反射した光がほのかに天井も照らす。陰影がもたらす静寂感が心を落ち着かせる。
7.やはりリビングはダウンライトではなく、ペンダントやスタンドのほうがあたたかみが出て、生活感のある落ち着いた空間づくりができる。
キッチンはかなり問題がある場合があります。肝心の作業台よりも、通路など必要ないところにシーリングやダウンライトが多くついていることが多いです。冷蔵庫は開ければ中が明るくなり、換気扇には照明がついている場合が多いので、シンクや作業台だけを照らすだけで十分明るくなります。
寝室は寝るための場所なので、本来そんなに明るくする必要はありません。しかし、クローゼットが暗いので、そのためにとても明るくなっている場合がよくあります。解決策として、開閉時に点灯するタイプにするだけで、必要なときだけ明るくなり、経済的でしかも部屋の雰囲気もこわしません。
子ども部屋も同じ考えで、机の上をきっちり明るくできれば、部屋全体をすみずみまで明るくする必要はありません。
〈既存住居・賃貸の場合の配置〉
最後に、既存住宅や賃貸物件の場合、ダイニングテーブルの真上に電源があるとは限りません。そんなときは天井に穴をあけることなく、ペンダントライトを吊り下げることのできる専用器具があります[写真8]。範囲は限られていますが、意外と重宝します。天井に穴をあけても、それほど修繕費用はかからないので(不動産屋さんに要確認)、コードハンガーやアジャスター[写真9]などを使って、心地よい空間にチャレンジしましょう。
6.目線ほどに低く吊り下げられたペンダントライトがテーブル面を照らし、テーブルに反射した光がほのかに天井も照らす。陰影がもたらす静寂感が心を落ち着かせる。
7.やはりリビングはダウンライトではなく、ペンダントやスタンドのほうがあたたかみが出て、生活感のある落ち着いた空間づくりができる。
8. 天井に穴をあけなくても、ペンダントライトを移動できるパーツ。
9. flame社製「アジャスター」は高さも簡単に調節できる。