「水、空気、光」-いずれも、生きていくうえでなくてはならない大切な要素です。しかし日常生活の中では、意識しないとその大切さや違いに気づけないかもしれません。照明に関していうと、幼い頃から蛍光灯の煌々とした明るさに慣れ親しんでいる日本の場合、なおさらです。
日々の暮らしの中で、少し灯りを意識するだけで、住空間がとても心地よい安らげる住まいに変わります。意識すると、見過ごしていたなにげない気持ちの豊かさに気づけるかもしれません。そこには正解も間違いもありません。あなたがその空間で心地よく過ごせるかどうかです。固定観念にとらわれず、自分の思いを形にしましょう。いろんな問題や決断を決して人まかせにしてはいけません。なぜなら、そこに住むのはあなた自身だからです。遠回りでとても労力のかかることですが、自分にとって大切な基準みたいなものが見つかるはずです。
日本の照明環境は明るすぎます。多くの人が長い時間、同じ環境で過ごすことで灯りの感覚が鈍感になってしまっています。昼間の太陽光がしっかりと入る部屋に、蛍光灯のシーリングが部屋を必要以上に照らしているのをよく見かけます。食べ物にたとえると、すごく濃い味に慣れて、繊細な素材の味を感じることができない状況に似ています。
太陽が沈み、光の主役が照明へと変わる。琥珀色のガラスからもれる光が、天井や壁をほんのり橙色に染める。太陽の移ろいとともに少しずつ心も体もリラックスしていく。
私がこれからお伝えしたいのは、安らぎや心地よさを求めて照明を選ぼうとしているかたがたに、ビジュアル的なライフスタイルの提案や使い方のマニュアル的な説明ではなく、感受性を豊かにして、自分の力で導き出すためのアドバイスになればいいなと思っています。
私が今まで経験して感じた、照明を考えるうえで大切な要点を10項目にまとめてみました。照明選びに疑問を感じたら、一つでも実行してみてください。
- ①自分の灯りの好みを知る。
- ②よい灯りのイメージをもつ。できれば感覚ではなく、なぜそれがよいかの理由を考える。
- ③個々の場所で器具を考えるのではなく、空間全体で考える。
- ④実際の空間で灯りを体感する。
- ⑤生活空間の用途をできるだけくわしくイメージする。想像の中で生活してみる。
- ⑥照明器具の形から選ばない。
- ⑦ダウンライトをできるだけ使わない。
- ⑧スタンドライトを使いこなしてみる。
- ⑨引き算の照明をする。
- ⑩調光器をとり入れてみる。
それぞれの項目について、くわしく説明してみます。
①自分の灯りの好みを知る。
全体的にフラットな明るい空間がよいのか、抑揚のある明るすぎない落ち着いた空間が好みなのか。モダンですっきりした空間がよいのか、ナチュラルな生活感があるほうがよいのかなど、インテリアも含めた灯りのイメージをできるだけ具体的に描いてみましょう。
②よい灯りのイメージをもつ。できれば感覚ではなく、なぜそれがよいかの理由を考える。
住空間では、昼間よりも夜のほうが長い時間過ごすことが多くなります。昼の灯りをそのまま夜再現するのではなく、日頃の生活を振り返りながら、リラックスできる灯りを想像してみましょう。昼と違い外が暗いので、それほど明るくしなくても十分明るさを感じられます。すてきな夜を演出する温かな灯りをイメージしましょう。
③個々の場所で器具を考えるのではなく、空間全体で考える。
たとえばLDKで考えると、それぞれさまざまな照明器具を選ばなければいけません。ダイニングはダイニングの照明、リビングはリビングの照明という考え方ではなく、LDKという一つの空間をどれくらいの明るさにしたいかイメージすることが大事です。それぞれの明るさがプラスされると、思った以上に明るくなってしまいます。色みを統一することも忘れずに。
④実際の空間で灯りを体感する。
100Wの明るさが実際どれくらい明るくなるかわからず、決めている人が結構います。家電量販店などでは、○畳用などの目安で販売していますが、かなり明るく設定されていたりします。あなた自身の灯りの単位が決まれば、必要のない灯りを減らせたり、W数を少なくすることができるようになります。
⑤生活空間の用途をできるだけくわしくイメージする。想像の中で生活してみる。
抑揚のある落ち着いた空間をつくる場合、必要なところに必要な明るさを配置することが重要になります。全体的に明るくする場合、家具などの配置はあとからでも構いませんが、ダイニングテーブルやソファの位置などはあらかじめ決めておいたほうが余計な設備を抑えられるだけでなく、より具体的な暮らし方が見えてくるはずです。
⑥照明器具の形から選ばない。
雑誌やSNSの情報だけで照明器具を形から選ばず、どんなふうに光るのか、明るさはどれくらいあるのか、サイズ感は空間に合っているかなど、あくまで照明はどう光るかが重要なポイントです。
⑦ダウンライトをできるだけ使わない。
空間をすっきりさせたい場合は別ですが、ダウンライトを使うときのデメリットがいくつかあります。まず一つは、天井近くの必要でないところが一番明るくなり、下に行けば行くほどその光は弱くなってしまいます。別の視点から見ると、必要な明るさを得ようとすると、天井部分は思っている以上に明るくなってしまいます。もう一つは、住宅で使われるダウンライトは配光角が広いものが多く、たくさんつけないと、必要なところに明るさを得ることができません。この配置の場合、必然的に全体的にフラットな明るい空間になってしまいます(このケースがかなり多いです)。
⑧スタンドライトを使いこなしてみる。
必要な場所に必要な明るさを配置する場合、スタンドライトはとても効果的です。レイアウトを変える場合もとても扱いやすく、生活動線に合わせた必要最小限の効果を得ることができます。また、光の透過するランプシェードを使うと、空間に抑揚が生まれ、とても魅力的な空間づくりができます。寝る前にスタンドランプだけで過ごしてもいいですね。
⑨引き算の照明をする。
③でも話したとおり、さまざまな照明を空間に設置した場合、それぞれがけんかしてしまって、想像以上に明るい空間になってしまいます。暗くなることに恐怖心があるかもしれませんが、設計者としっかり灯りの価値観を共有して、足しすぎないように注意をしましょう。
⑩調光器をとり入れてみる。
オンかオフかではなく、天気や時間帯や生活リズムに合わせて光を調節できると、光をより繊細に扱えるようになります。なにげない日常が特別な時間に変わるはずです。
一番大切なのは、自分自身が考えながら、体感したことを実感することです。これらは設計者でも決めることはできません。 進めていくにあたり、環境がいきなり変わることにとまどうかもしれません。順応するのにも時間がかかります。少し心にゆとりをもって、長い目で取り組んでみてください。
布シェードからもれるやわらかな灯りは、読書するのにちょうどいい明るさ。本を読むときは、いつもこの場所と決めている。
ブラケットを間接照明として使う。天井がやわらかく照らされることで、見た目の明るさが増す。天井にリバウンドさせることでやわらかな光になる。
必要なところに必要な明るさがあれば、空間をくまなく明るくする必要はない。暗くて見えすぎないことで心も落ち着く。
手元をほどよく照らすスタンドライト。まぶしくないやわらかな光が目にもやさしい。このほうが集中できる気がする。
目線ほどに低く吊されたペンダントライトが、ほの暗い部屋でテーブルを照らす。楽しい団らん風景が目に浮かぶ。低く吊すことで、効果的にテーブルを明るくできる。
それぞれの項目について、くわしく説明してみます。
①自分の灯りの好みを知る。
全体的にフラットな明るい空間がよいのか、抑揚のある明るすぎない落ち着いた空間が好みなのか。モダンですっきりした空間がよいのか、ナチュラルな生活感があるほうがよいのかなど、インテリアも含めた灯りのイメージをできるだけ具体的に描いてみましょう。
②よい灯りのイメージをもつ。できれば感覚ではなく、なぜそれがよいかの理由を考える。
住空間では、昼間よりも夜のほうが長い時間過ごすことが多くなります。昼の灯りをそのまま夜再現するのではなく、日頃の生活を振り返りながら、リラックスできる灯りを想像してみましょう。昼と違い外が暗いので、それほど明るくしなくても十分明るさを感じられます。すてきな夜を演出する温かな灯りをイメージしましょう。
布シェードからもれるやわらかな灯りは、読書するのにちょうどいい明るさ。本を読むときは、いつもこの場所と決めている。
ブラケットを間接照明として使う。天井がやわらかく照らされることで、見た目の明るさが増す。天井にリバウンドさせることでやわらかな光になる。
③個々の場所で器具を考えるのではなく、空間全体で考える。
たとえばLDKで考えると、それぞれさまざまな照明器具を選ばなければいけません。ダイニングはダイニングの照明、リビングはリビングの照明という考え方ではなく、LDKという一つの空間をどれくらいの明るさにしたいかイメージすることが大事です。それぞれの明るさがプラスされると、思った以上に明るくなってしまいます。色みを統一することも忘れずに。
④実際の空間で灯りを体感する。
100Wの明るさが実際どれくらい明るくなるかわからず、決めている人が結構います。家電量販店などでは、○畳用などの目安で販売していますが、かなり明るく設定されていたりします。あなた自身の灯りの単位が決まれば、必要のない灯りを減らせたり、W数を少なくすることができるようになります。
⑤生活空間の用途をできるだけくわしくイメージする。想像の中で生活してみる。
抑揚のある落ち着いた空間をつくる場合、必要なところに必要な明るさを配置することが重要になります。全体的に明るくする場合、家具などの配置はあとからでも構いませんが、ダイニングテーブルやソファの位置などはあらかじめ決めておいたほうが余計な設備を抑えられるだけでなく、より具体的な暮らし方が見えてくるはずです。
必要なところに必要な明るさがあれば、空間をくまなく明るくする必要はない。暗くて見えすぎないことで心も落ち着く。
⑥照明器具の形から選ばない。
雑誌やSNSの情報だけで照明器具を形から選ばず、どんなふうに光るのか、明るさはどれくらいあるのか、サイズ感は空間に合っているかなど、あくまで照明はどう光るかが重要なポイントです。
⑦ダウンライトをできるだけ使わない。
空間をすっきりさせたい場合は別ですが、ダウンライトを使うときのデメリットがいくつかあります。まず一つは、天井近くの必要でないところが一番明るくなり、下に行けば行くほどその光は弱くなってしまいます。別の視点から見ると、必要な明るさを得ようとすると、天井部分は思っている以上に明るくなってしまいます。もう一つは、住宅で使われるダウンライトは配光角が広いものが多く、たくさんつけないと、必要なところに明るさを得ることができません。この配置の場合、必然的に全体的にフラットな明るい空間になってしまいます(このケースがかなり多いです)。
⑧スタンドライトを使いこなしてみる。
必要な場所に必要な明るさを配置する場合、スタンドライトはとても効果的です。レイアウトを変える場合もとても扱いやすく、生活動線に合わせた必要最小限の効果を得ることができます。また、光の透過するランプシェードを使うと、空間に抑揚が生まれ、とても魅力的な空間づくりができます。寝る前にスタンドランプだけで過ごしてもいいですね。
手元をほどよく照らすスタンドライト。まぶしくないやわらかな光が目にもやさしい。このほうが集中できる気がする。
⑨引き算の照明をする。
③でも話したとおり、さまざまな照明を空間に設置した場合、それぞれがけんかしてしまって、想像以上に明るい空間になってしまいます。暗くなることに恐怖心があるかもしれませんが、設計者としっかり灯りの価値観を共有して、足しすぎないように注意をしましょう。
⑩調光器をとり入れてみる。
オンかオフかではなく、天気や時間帯や生活リズムに合わせて光を調節できると、光をより繊細に扱えるようになります。なにげない日常が特別な時間に変わるはずです。
一番大切なのは、自分自身が考えながら、体感したことを実感することです。これらは設計者でも決めることはできません。 進めていくにあたり、環境がいきなり変わることにとまどうかもしれません。順応するのにも時間がかかります。少し心にゆとりをもって、長い目で取り組んでみてください。
目線ほどに低く吊されたペンダントライトが、ほの暗い部屋でテーブルを照らす。楽しい団らん風景が目に浮かぶ。低く吊すことで、効果的にテーブルを明るくできる。